待っていた花が咲いたよ 2024/5/1 水

スキーブーツのカスタマイズ その1 インソールの効果 2021/11/15

 

 新品のブーツはそのままでは性能を発揮できないですね。
 足にフィットさせることはもちろん大切ですが私が考える最重要ポイントはブーツを履いたときの骨格的な運動軸を理想の向きに調整すること、次にブーツ自体の可動軸をそれに一致させることです。

 以前、脛を前傾させた時に膝が内側に入ってしまういわゆるアンダーカントの改善をインソールの交換で可能ということを書きましたが、その理由について考えてみたいと思います。

 まず人間の足の機能について考えてみます。登り坂でも下り坂でも、また地面が体に対して側方に傾斜していても足底を地面にぴったり着けて歩くことができますよね。
足首が自在に動くからに他なりませんが、そのうち登り下り方向の足首の動きは登りの時つま先が上がる方向の運動を背屈、下りの時のつま先が下がる方向の運動を底屈と呼びます。この方向の運動は距腿関節という単純な1軸(蝶番)関節で行われます。脛骨と腓骨がくっついてその下側にできる円筒形の凹みに距骨の距骨滑車という円筒形の凸部がはまり込んで回転し距骨の先が上下に動きます。これが底屈と背屈です。底屈/背屈の軸が内側に傾くのがアンダーカント、外側に傾くのがオーバーカントです。

 距骨の下には距骨下関節と呼ばれる複数の骨(距骨、踵骨、舟状骨)から成る複雑な顆状関節があって楕円の凹面と凸面で2軸方向の運動ができます。1つ目の軸は踵からつま先に向けた直線を中心に回内(足の内側が下がる)、回外(足の内側が上がる)運動、もうひとつの軸は脛の長軸方向の直線を中心に足部の外転(つま先が外側を向く)、内転(つま先が内側を向く)運動です。この2軸は面白いことにそれぞれが勝手に動くことはできなくて2種類の組み合わせの動きしかできません。
外返し(回内+外転) または 内返し(回外+内転) です。


 回内+外転 運動の場合、土踏まずは下がって扁平になります。土踏まずは内側にあるので内側が下がるからその上に乗る距骨も内側が下がる方向へ傾斜して足に対して膝が内側へ傾斜するわけです。これがアンダーカント状態になります。外反扁平足の人は常にこの形になっているわけでつま先は外を向いて膝を内側へ倒す歩き方をします。


 回外+内転 運動の場合は土踏まずが持ち上がって足の甲が高くなり距骨は外側が下がる方向へ傾斜して足に対して膝が外側へ傾斜、これがオーバーカント状態になります。つま先は内側を向きます(元々骨格的に外を向いているので立った状態ではつま先が進行方向を向く) これが強すぎる人はつま先を進行方向に向けると膝が外側へずれます(いわゆるガニ股)。重度の変形性膝関節症の人も似た肢位を取りますけどこれは膝自体に問題があって起こるので足首の問題とは異なります。ですが変形性膝関節症の人にはアンダーカント方向に補正するインソールは効果があるみたい。

 足の甲部のバックルを強く締め付けると土踏まず部分が押しつぶされるというタイプの人は距骨の内側が下がり、つま先は進行方向外側を向きます。だからアンダーカント方向へシフトするはずです。そこで土踏まず部分を下から支えるインソールが役立つことになります。
 ブーツのカント調整はその人の距腿関節の軸方向にブーツの軸方向を合わせることが目的と私は考えてます。


*参考文献 医歯薬出版 カパンディ 関節の生理学Ⅱ 下肢 

コメント