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国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
という書き出しがあまりに有名な川端康成の小説「雪国」、1968年に日本初のノーベル文学賞受賞の話題が当時はもちきりでした。私は小学校6年生でした。小学生が読むには早すぎる内容です。というわけで還暦が済んでから初めて読みました^_^
舞台はスキー客が泊まりに来る温泉宿場。雪国がどこであるかは作中には書かれていませんが後に著者本人が越後湯沢であると明らかにしたそうです。
あらすじは良くまとまったものがネットにありますので書きません。文章はさながら映像が脳裏に浮かんでくるような視覚的描写が美しい。
結構、艶めかしいエロティシズムに溢れた内容を猥褻な言葉を一切使わないで読者に連想させる筆致は流石だと思いました。そして女性(作中では駒子と葉子)の言葉や心理、行動の描写が面白い。女性の言葉を、その背景にどんな思いが蠢いているかを考えずに額面通りに受け取ると思いがけないしっぺ返しを食らうということを知り尽くした人の文章みたい。川端康成という人は意外と遊び人だったのかもと思ってしまいます。
物語の中で駒子と葉子、そして葉子が付き添って連れてきた病人の行男との関係性は謎のまま物語が進行して行きます。基本的にミステリーだと思います。クライマックスでその謎解きがなされると思いきや、ヒントが提示されるだけで読者の想像にまかせる終わり方。かなり唐突に結末を迎えます。
国境の長いトンネルを抜けると私は雪国ではなく銀河の真っただ中に放り出されて上も下も分からなくなるのでした。
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